ドン・キホーテの電子マネー「majica」にみる、ドンキの本気
ドン・キホーテが好きで、よく行きます。モバイル会員にもなっており、クーポンで凄まじい安値のシャンプーを買ったりします(198円→98円に値引き等)。そのドンキが3月18日、ついに電子マネー「majica(マジカ)」を開始しました。
「majica」というネーミングセンスもさすがです。
「Miracle Amusement Jonetsu(情熱)Intelligent Card」の略だそう*1。
近年の電子マネー市場の成長は、飛ぶ鳥を落とす勢いです。07年頃から、EdyにPASMO、nanaco、WAONなどが普及し始め、その後5年で発行枚数は3倍に(6000万枚→1億8000万枚)。
(日本銀行決済機構局「最近の電子マネーの動向について(2012 年)」p.2より引用)
Edyなど先駆者たちに遅れること7年、ついにドン・キホーテが決断を下したようです。
1000円以上買った場合は10円未満が切り捨てに!
「majica(マジカ)」は1000円単位でチャージができ、1円につき1%のポイントがたまります。おまけに1000円以上の購入で10円単位が切り捨てに!つまり、マジカを提示して3,689円の買い物をした場合、9円マイナスの3,680円で良いんです。ちょっとお得な気分になりますよね。
ドンキは店舗によって、レジ横に「足りない時にお使い下さい※ただし4円まで」などと書かれた箱に1円玉が沢山入れてあります。あのサービス、いかにもドンキらしくていいなぁと思っておりましたが、マジカを使えばその2倍以上もお得なんですね。
10円未満切り捨ては「消費増税対策」
3月18日放送の「NHKニュースウオッチ9」によると、ドンキの電子マネーは「消費増税対策」の意味合いが強いそうです。番組ではマジカを使ったとみられるお客さんが、10円未満切り捨てのサービスについて「助かりますね、消費税も上がりますし…」とコメント。
同社のオペレーション本部統括部長は、
「他社の電子マネーにはない付加サービスを多数、ご用意させていただいておりますので、間違いなく競争には勝てると思います」
と自信を見せます。他社にはない「付加サービス」とは、一体何なのか?
1年に20万円使えばブロンズ会員、50万円でシルバー会員に
まずは「ランクアップ制度」です。ドン・キホーテグループでの年間購入金額によってランクがアップし、特典が受けられるというもの。
下記表によると、年間20万円以上のお買い物で「ブロンズ会員」に、50万円以上で「シルバー」、100万円以上で「ゴールド」にランクアップ。最上位は「プラチナ」ということですが、達成条件が「????」となっているのは、ドンキなりのユーモアでしょうね。
そういえばドンキの会長、安田 隆夫氏は02年に小型店ピカソを出店した際、ネーミング理由を問われて「いや、深く考えていない」と発言しておられました。
――「いいんですか、そんな行き当たりばったりで(笑)」
安田社長(当時):「行き当たりばったり。柔軟な対応(笑)」
今回も色々と、柔軟に対応してくれるのでしょう。
ブロンズ会員になると、雨天時にありがたいサービスが…
ドンキ愛好家としては、できればブロンズ会員くらいにはなってみたいものです。が、ドンキで年間20万円使うのって、けっこう難しいような気も…。自分は、1度のドンキで大袋2~3個分くらい買いますが、ドンキのシャンプーや洗剤、ドンキのトイレットペーパーや、ドンキの缶詰などをかなり買い込んでも、1度に4000円くらいしか使えません。「ブロンズ会員」になろうとして、1ヶ月に1万7000円以上も使えば「今月はけっこう散財しちゃったなぁ~、反省反省」となること必至です。
では「ブロンズ会員」になると、どんな特典が受けられるのか。翌年のポイント還元率は1%で、通常会員と変わりありません。ところが、雨天時に傘が貸してもらえるのです(※ただし店舗で指定する傘となります)。
「傘が貸してもらえるくらいでは満足できない!」ということで、年間50万円以上をドンキにつぎ込むと、ようやくシルバー会員に。1ヶ月に4万円以上使わなければならない計算です。ブランドの鞄やアクセサリーを、しこたま買い込めば何とかなるかもしれません。
シルバー会員になると、翌年のポイント還元率は2%にアップ。そして、雨天時に傘が貸してもらえます(※ただし店舗で指定する傘となります)。あと、サンプル商品が貰えたり、店によっては貰えなかったりするそうです。
ゴールド会員になると使える「コンシェルジュフォン」とは
ではもうひと頑張り、1ヶ月に9万円をドンキで使い、年間100万円クラスの「ゴールド会員」になると…?翌年のポイント還元率は3%にアップ。雨天時の傘貸出はもちろん、サンプル商品がもらえるかもしれない(もらえないかもしれない)。さらにゴールド会員には「コンシェルジュフォン」なるものが貸し出されるのです。
説明しましょう。コンシェルジュフォンとは、「スタッフ直通のPHS」。忙しそうな店員さんに対し、遠慮しがちに「あの~浄水器ってどこですか…?」などと尋ねなくても、コンシェルジュフォンに話しかけるだけで店員が駆けつけてくれるという、なんともVIP待遇なシステムです。
100万円以上使って、駐車場が一部無料に
他にもゴールド会員になると、お買い物時の駐車場利用料が無料になるようです。まあドンキの駐車場は、無料または「90分まで無料」などが多いので、年間100万円も使って駐車場が無料ですよ!と言われても…という気はしますが。その他のサービス詳細については、HPでどうぞ。
ゴールド会員のさらに上、プラチナ会員も、こうしたサービスは受けられるようです。が、いかんせんプラチナ会員となるための条件が書いてない。このくらい雑な方が、遊び心があって良いのかもしれませんね。
「私自身が仕掛けを考えるというよりも、そのときどきのお客様のほうがけっこう先に進んでいるんですね。(中略)それこそ条件反射的な対応でいいんじゃないかと思いますけど。」
「理屈でやっちゃうと、それこそ(※引用者注:広告)代理店じゃないので。」
「(同:ドンキはどこへ行くのか)実は私もよく分からない(笑)」
良い意味で突っ込みどころ満載の「マジカ」。会長さえも「どこへ行くか、よく分からない」ドン・キホーテの真髄を見た気がします。
店員さんからは「majicaで会計、超めんどい」の声も
Yahoo!リアルタイム検索などをみると、消費者からは「マジカ買った~♪」「便利!」など喜びの声があるものの、若い店員さんからは不満もちらほら。
■majicaカードとか始めるからね、客は便利で楽しいけど、働く方は、めちゃくちゃ面倒くさいね。
■majica会計超めんどい
■店長が「majicaすすめろ」とかウザいので、反抗して1回も勧めてやらなかった
(Yahoo!リアルタイム検索より、一部加工)
4月以降の同社業績に、マジカはどんな影響を与えるのか。次回ドンキに行った時には、私もマジカを作ろうか、迷っているところです。晴れてマジカユーザーになったあかつきには、使用感をお届けできればなと思っております。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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