学生の「アルハラ」、新歓のノリと空気に殺されないで
入学シーズンですね。お花見や新歓コンパに参加する人も増えると思います。一方で毎年、学生の「飲酒事故」が後を絶ちません。(若者を死に追いやる「イッキ飲み」、アルハラを防ぐには?- 北条かや- Yahoo!ニュース)
悲しいことに、コールでの大量飲酒や「イッキ飲み」を 「伝統」 と勘違いしている部活やサークルが未だに沢山あるのです。
学生の6割「飲め!と言われても、断れるかどうか…」
飲酒の強要などで子を亡くした親らでつくる「イッキ飲み防止連絡協議会」では、93年から毎年「イッキ飲み防止キャンペーン」を展開しています。その一環として、学生らに「アルハラを断ることができるか」とアンケート調査したところ、33%が「断れない」、27%が「わからない」と回答しました(※飲酒事故に興味のある学生からの回答なので、実際はもっと多いと思われます)。
学生たちが飲酒を断れない理由は、「ノリが悪い・空気を読めないと思われたくない」といったものが目立ちます。こういう「空気読め圧力」が、まさにアルハラなのですが。
「空気」が人を殺す
自分もそうでしたが、大学に入りたての頃は、友達ができるかどうか、すごく不安なものです。サークルでも部活でも、とにかく「仲間」に入れてもらわなきゃ、仲間に入れてもらうには飲んで場を盛り上げなきゃ……との焦りから「自分、飲みます!」と言ってしまう同級生をよく見かけました。
そういう「空気」が人を殺すことが、本当にあるのです。
■東京大学 2年生男性 死亡日:2012年7月28日
7月27日夕方ごろから、所属する運動系サークルで、隅田川花火大会の場所取りをするため集まった仲間や社会人のOBも含め41名で飲酒。翌28日未明に体調を崩し、急性アルコール中毒で搬送され、病院で死亡が確認された。
車座でフォークダンスのマイムマイムを歌い踊り、演奏が止まると誰かが中央の焼酎を飲むルール。飲む人や量は自由裁量だったとされているが、誰かが飲まなければならない設定であり、飲む人は称賛され、場が盛り上がったという。
コールがある間は、焼酎の原液を呑み続けるルールがあり、東大駒場キャンパスに40年以上続くサークルの伝統的な飲酒儀式であった。
周囲の学生は意識を失った者を介抱せずに放置しており、119番通報された時点で、死亡後約2時間が経過し、死後硬直が始まっていたという。
(急性アルコール中毒等による大学生の死亡事例 2001~14 イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン2014より、下線は引用者)
コールでの大量飲酒が「伝統儀式」。酔いつぶれた学生は別の部屋で放置され、吐しゃ物を喉に詰まらせて死亡。飲酒事故の多くが、このパターンで起きています。
「見守る役割」がいればOKなのか
知人の体育会出身者いわく「ちゃんとした部活では、酔いつぶれた仲間を別室に運んだあと、きちんと"見守る" 役割が用意されているし、飲酒事故を防ごうという意識はあったよ」。
言いたいことは、よく分かるのです。仲間同士の絆を深めるため、お酒を飲みながらのコミュニケーションが重要なのも、分かる。ですが「酔いつぶれた学生の容態が急変しないか見守る役割」が必要なほど飲ませるのが当たり前になっている現状は、どう考えてもおかしいと思う。
個人的な話になりますが、身近に飲酒事故で亡くなった人がいます。その部活の幹部学生は、「もうそのことは聞かないでくれ、勘弁…」と言っていました。幹部として責任を追求された彼は、こちらと目を合わせることもできず、憔悴しきった様子だったのを覚えています。
彼が全ての責任を負う必要までは、ないのかもしれません。が、やはり1人の命を奪った責任はあるんだよ…と思いました。けれども、そこまでは言いませんでした。
次のような記事もあります。
2年前、大学のサークルでの飲酒後に亡くなった1年生の男性(当時20)の母親(50)は、今も心の傷が癒えない。夫と病院に駆け付けると、変わり果てた長男の姿があった。着ていたシャツやスエットは吐しゃ物や排せつ物にまみれていた。「こんなになるまで……一体、何があったのか」
事実解明を求める両親に対し、大学がまとめた報告書では、打ち上げ当日の事実関係の記述はA4判の二ページだけ。集団心理やゲーム感覚、「誤った伝統」による過度な飲酒は認める一方、「飲酒の強要は認められない」とした。やり場のない怒りと悲しみ。「息子は勝手に飲んで、勝手に死んだのか。そんなはずはない」。
何人もの部員に話を聞くうち、焼酎をついだ先輩の一人が言った。「飲まなきゃいけない、つがなきゃいけない雰囲気だった。皆そうしてきた」。長男は何度も吐く姿を目撃された。その異常さに誰も気付かなかったのか。もっと早く救急車を呼んでくれれば…。
母親は長男の死後、長男が生前に使っていた部屋で寝ている。あおむけになると、はにかんだ笑顔の遺影が目に入る。「おはよう」「おやすみ」。毎日、話し掛けている。
事故後、サークルは解散した。だが、他の大学で同様の死亡事故が続くと、胸が張り裂けそうになる。「息子は命を懸け、アルハラの“伝統”を止めた。こんな悲しい思いをするのは終わりにしてほしい」
(中日新聞:「アルハラやめて」母の叫び 後絶たぬ死亡事故より抜粋、引用。詳しくは全文をご参照下さい)
学生さんは飲酒を強要されても、どうか断って下さい。気分が悪いフリをしてでも、逃げて下さい。それで切れる人間関係など、あなたの人生に全く必要ないと思います。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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