「20代のマクドナルド離れ」とマスコミの影響

 日本マクドナルドの業績悪化については大手メディアから有名ブロガーまで色んな人が分析していますね。ざっと見ると、これまで出された主な要因は次のようなものです。

(1)コンビニとの競争激化

■ マクドナルド、経常益58%減の100億円日本経済新聞

→コンビニがコーヒーやチキンなど店内調理の食品を強化していることが業績悪化の一因

■「マクドナルド対コンビニの垣根を越えた戦争が始まっている」(大西宏氏)

(2)店舗運営が上手くいっていない

マクドナルド失墜の原因は行き過ぎた「効率主義」にある(イケダハヤト氏)

→「店内でゆっくりする暇も与えてくれない場所」という認識に変わった、との感想が述べられています

マクドナルドに行かなくなった4つの理由 (イイヅカ アキラ氏)

→基幹メニューが美味しくない、店舗がくつろげなくなった、選ぶ楽しみがないなど

 なので私が今さら付け加えることもないと思っていたのですが…先日のクリスマス、思わずYahoo!ニュースでこんな記事を書いてしまいました。

日本マクドナルド、利益半減の理由は「20代のマック離れ」?Yahoo!ニュース)

若者の外食頻度に関するデータから、下記の仮説を提示してみたのです。

 (1)20代の外食回数は、この1年で増えている(他の世代と比べても顕著)

 (2)だがマクドナルドの顧客は戻っていないどころか、減り続けている

(3)中心顧客であった若者にとって、マックが以前ほど魅力的ではなくなっているのでは?

 上記の記事は閲覧数が多かったためか、比較的たくさんのコメントを頂きました*1。まとめて抜粋すると、だいたいこんな感じです。

■ なんでマクドの経営の失敗を、20代のせいにするんだ

■ 自分は20代じゃないが、マックには行かない。若者だけではなく、みんなが離れたのでは?

■ 高価格路線が失敗しただけ。高くて、まずくなったのが要因

などなど…

 もちろん私とて「マックに行かなくなった20代が悪い!」なんて主張したいわけではありません*2

とはいえデータだけ見ると、20代のお給料はここ最近、30代や40代と比べてわずかながら増えています*3。金銭的に少しだけ余裕のできた若者たちは、自然な流れで外食を増やしている。なのにマクドナルドには以前ほど行かなくなっているのです*4

とにかく「安くて適度においしくて、一息できる」場所だったはずのマクドナルドが、20代にとって魅力的でなくなっているのは事実です。マックの「快適さ」については『マクドナルド化する社会』はじめ"効率化・合理化の極み"といった形で批判されることも多かったのですが、原田前社長は「回転率を上げるため」に狭く固くしていた座席を一部ソファに変えたり、ファミリー向けのゆったりした作りの店舗を増やしたりと、一見「マクドナルドらしくない」店舗改装を進めてきました。その結果、少なくとも日本のマックが以前より快適になったのは事実かと思います。

お店は快適になったのに、お客さんは減り続けている。ということはやはりメニューに問題があったのかな?と邪推するわけです。10~11年に発売され累計1億個以上を売り上げた「ビッグアメリカ」シリーズ以来、ヒット商品に恵まれていないのもありますし。

 私自身もそういえば20代のマクドナルド離れを推進する一人であります。1~2年前まではマックでおしゃべりするのがちょっとした背徳感もあって好きでした*5が、今はたま~にテイクアウトするくらいです。

自分がマックに行かなくなった理由は、正直よく分かりません。日経などが指摘するようにコンビニのコーヒーを飲むようになったわけでもないですし、スーパーの惣菜を利用しているわけでもない。他のファストフードにもあまり行きません。そもそも牛丼チェーンやサイゼリヤなど「デフレの勝ち組」といわれた各社も、マックと同じで業績はあまり回復していないですものね。

「味が落ちた」という人もいますが、個人的に「最近のマックはまずい」とも思いません。だいたいマックにほっぺが落ちるほどの美味しさを求めている人ってそんなにいないと思いますし…*6

ただ何となく、マクドナルドが業績悪化している、メニューの魅力がなくなっている、ビッグマックの無料チケットを配りまくったらしい、60秒キャンペーンなんて迷走したことをやっている、といったニュースを何度も耳にするたび「そうかな~…でもこれだけ批判されてるってことは、何かマックって最近ダメなのかも…」という感じで、だんだんと足が遠のいた感は否めません。

こんな言い方をすると誤解を生むかもしれませんが、銀行の業績悪化のニュースを聞いて貯金を引き出す人々の心理状態と似たようなもので、マスコミが作り出す「マックがヤバい」という"空気"に流され本当に行かなくなった…という感じはあります。 

原田前社長も言及されていましたが(マクドナルド・原田社長がマスコミに恨み節 J-CASTニュース 2013.8.12大手メディアの作り出す空気というのは時におそろしく、「マックが迷走している」との報道が企業イメージを悪化させ、顧客を遠ざけるという循環はたしかにあったのでしょう。

(むろん逆もまたしかりです。ちょっと前まではマスコミ各社も「原田マジック」なんて騒いでいたわけですしね。) 

 【北条かやプロフィール】

86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。

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*1:あの記事が他の記事よりも多く閲覧されたということは、自分も含め「最近のマックにひとこと言いたい人が沢山いる」ことの現れなんだろうなぁと感じ入った次第です…。

*2:そもそも「若者の◯◯離れ」は年長世代の共感や20代の反感(と少しの共感)を得やすいので読まれやすいのでしょう…自分でニュースにしといてなんですが。

*3:DODA 平均年収データ 2013 | 賃金データ | 株式会社インテリジェンスより

*4:マックより高価格帯の外食が増えたのかもしれませんが、それはデータを見てもよく分かりませんでした。

*5:家庭環境が厳しかったので、ファストフードの代表格であるマックへ行くことへの罪悪感が長らく消えませんでしたが、その罪悪感を乗り越えさせるほどここ数年のマックは美味しく快適でしたし、よく行っていました。

*6:むしろあの健康に悪い感じが背徳感となり、美味しさにつながっている部分もあるのではないでしょうか。