2013年のヒット曲にみる「これが日本の音楽業界の現状です」

 2013年のオリコンランキングとiTunesランキングが発表されましたね。音楽関連の話題を扱うニュースサイト「The Natsu Style」によると、13年のオリコンシングルランキングトップ10は下記のようです。※集計期間:2012/12/24付~2013/12/16付

1位 : 195.5万枚 … AKB48さよならクロール

2位 : 147.9万枚 … AKB48恋するフォーチュンクッキー

3位 : 126.1万枚 … AKB48ハート・エレキ

4位 : 113.3万枚 … AKB48 「So long !」

5位 : 101.2万枚 … EXILEEXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~」

6位 : 88.1万枚 … 嵐 「Calling/Breathless」

7位 : 67.2万枚 … SKE48チョコの奴隷

8位 : 66.2万枚 … SKE48 「美しい稲妻」

9位 : 55.8万枚 … NMB48僕らのユリイカ

10位 :55.7万枚 … 嵐 「Endless Game」

 一方、iTunes のランキングは下記のようになっています。

1位 「にんじゃりばんばん」 きゃりーぱみゅぱみゅ

2位 「We Are Never Ever Getting Back Together」 テイラー・スウィフト

3位 「恋するフォーチュンクッキー」 AKB48

4位 「Live While We're Young」 One Direction

5位 「Call Me Maybe」 CARLY RAE JEPSEN

6位 「恋する季節」 ナオト・インティライミ

7位 「ひこうき雲」 荒井由実

8位 「紅蓮の弓矢」 Linked Horizon

9位 「女々しくて」 ゴールデンボンバー

10位 「スターラブレイション」 ケラケラ

 ご覧の通り、13年のオリコンランキングとiTunesランキングにはかなりの違いが見られます。「The Natsu Style」ではこれを次のように解説しています(記事は11月25日のもの)。オリコンランキングでは、

■ AKB48とその姉妹グループが上位を占拠

 

■ AKB系列の間に、ジャニーズの嵐、関ジャニ∞Kis-My-Ft2SMAPといったメンバーが入っている秋元康とジャニーズ関係のユニット以外でトップ20に入ったのは、EXILEサザンオールスターズだけ

 

■ 5位のEXILEEXILE PRIDE」はCDにライブチケットを付属させ、大きく売上を伸ばした

 一方、iTunesランキングは

■ オリコンランキングとは全く異なる結果

 

■ 配信を解禁してないジャニーズ系がすべて姿を消す

 

■ 握手券等の特典頼みの勝負ができなくなり、女性アイドルグループはAKB48だけとなる

 

 ■ 1位はきゃりーぱみゅぱみゅにんじゃりばんばん」、2位はAKB48恋するフォーチュンクッキー」で、ここだけオリコンの年間ランキングと同じ

 

■ 先日、レコード大賞の優秀作品賞のノミネートが発表された時にはにんじゃりばんばん恋するフォーチュンクッキーしか知らない」との意見が多く見られたが、これらの意見は見事に配信チャートの結果と一致している

 

 ■ ドラマ主題歌のヒットは多くが配信であり、ケラケラ「スターラブレイション」やGReeeeN愛し君へ」はCDシングルではパッとしない成績だったが、配信では上位に

 

(引用元:2013年のオリコンランキングとiTunesランキングはどれだけ違うのか より一部抜粋。詳細は元記事をご覧ください)

 2010年にAKBが売れ始めてから、オリコンランキングは完全に「特典つきCDがどれだけ売れたかランキング」へと変容したのはよく言われるところです。上記のデータだけ見ると、オリコンよりもiTunes配信ランキングの方が、どちらかと言えばドラマの主題歌やCMソングなど、かつての「ヒット曲ランキング」に近いような気もします。

総合的に見れば「The Natsu Style」の指摘通り、オリコンiTunesランキングの双方で高い順位を獲得した「にんじゃりばんばん」と「恋するフォーチュンクッキー」だけが、全国的に売れたといってもいいのでしょう。

個人的にはここ数年、CDをほとんど買っていません。※追記:音楽はYouTube公式チャンネルから合法の範囲内でダウンロードして聴いていましたちなみに公式チャンネルからのダウンロードは著作権法違反には当たらないようですが、利用規約では禁止されており、民法上の責任は負うことになります*1曲の音質がCDより悪くても、別に気になりません

…という話をしたら、「君らみたいな若者が音楽業界を殺すんだよ」と言われたことがあります。確かにそうだなぁと思いました。でもやっぱり個人的に、CDを買う意味がよく分かりません。

あえて露悪的な言い方をすると、「CDを買わなくなった若者が音楽業界を殺した」というより、「音楽業界(の出すCD)が死んでるから買わなくなった」に近い感覚です。業界の関係者さんからすれば失礼千万だと思いますが、あくまで個人的な意見としては「買ってまで手に入れたい音楽」がないのです。「J-POPは殺された」という本が話題になったりもしましたね。

 (「J-POPを殺したのはソニー」 知られざる音楽業界のタブー

そういえば、ある知人いわく「00年代以降、着メロ・着うたを意識しすぎたあまり、サビ以外ほとんど同じ作りの曲が増えてしまった」とのことです。10代の皆さん向けに説明すると、かつては携帯の着メロ用に「サビだけ」ダウンロードする若者が多かったのです。それでサビさえよけりゃ…みたいな曲が増えたと。

で、今の中高生が何を聞いているかというと、だいたい10年前と変わっていないのです。嵐、EXILEGReeeeN安室奈美恵T.M.RevolutionラルクSPEED、ドリカム好きな子もいます(さすがにこれは親の影響)。モンゴル800が流行ってるという子もいました。「いい曲だよね~」とのこと。AKB好きは「一部のオタクとか?」だそうです。K-POPについては「もう流行ってない」。

最近だと金爆E-girlsくらいでしょうか。体育祭で踊ったりしているようです。あとはボカロ好きもちらほら。あれ?もしやJ-POP、00年代前半で止まってる…?なんて勘ぐりたくもなりますが、ぐだぐだ言ってもAKBや嵐、EXILEはビジネスとして成功しているわけで、文句をいうより黙って踊る人生の方が楽しいのかもしれません(大袈裟)。

ちなみに2013年の「JOYSOUND年間カラオケランキング」は下記のようになっています

1位 「女々しくて」 ゴールデンボンバー

2位  「残酷な天使のテーゼ高橋洋子

3位  「千本桜」 WhiteFlame feat.初音ミク

4位  「小さな恋のうた」 MONGOL800

5位  「ハナミズキ 」一青窈

6位  「紅蓮の弓矢」 Linked Horizon

7位  「栄光の架橋」 ゆず

8位 「キセキ」 GReeeeN

9位 「 ヘビーローテーションAKB48

10位 「天体観測BUMP OF CHICKEN

 こちらの方がより「13年現在、みんなが知ってる曲」に近いかもしれませんね。カラオケランキングなので当然とはいえ、オリコンランキングとの乖離がすごいです。1位の金爆、6位の「紅蓮の弓矢」は分かりますが、4位モンパチ、10位「天体観測」って…オリコンランキングと配信ランキング、そしてカラオケ。それぞれのトップ10がこれだけ違うということは、音楽にまつわる消費が多様化、細分化していることの現れなのだと思います。とりあえず今年のレコード大賞でも「これが日本の音楽業界の現状です」というコメントに期待します(さすがに2度はないか)。

 

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 【北条かやプロフィール】

86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。

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*1:YouTubeなどの動画サイトに「合法的にアップロードされているファイル」に関してはダウンロードの許可の有無は関係なく合法ダウンロードになります。サイトの利用規約でダウンロードを禁止していることがありますが、これは著作権法で縛られるものではありません。利用規約違反は民法上の責任を負いますが、それを理由として違法ダウンロードになることはありません。参照(1) Youtubeの動画を保存するのは違法? そのダウンロード、違法かも? (2) Youtube利用規約