クックパッドが仕掛ける「ダイエットビジネス」は成功するか
若い女性の8割が使うという巨大なレシピサイト「クックパッド」が、5月20日、ついに(?)ダイエットビジネスを始めました。管理栄養士の個別指導でダイエットできるとうたう「クックパッド ダイエット」。カロリーの高そうなスイーツレシピもたくさん載せているクックパッドが、今度はダイエットかぁ……と感慨深いものがあります。もちろん同サイトは、よく「体に良い食事」をテーマにした特集を組んでいますし、農家からの「やさい便」など宅配ビジネスも展開しているので、ヘルシーなイメージを強化するにはもってこいかもしれません。
「クックパッドダイエット」では、オンラインで「痩せない弱点がわかるダイエット診断」が利用できます(これは無料。55問も質問がある割に、普段から健康的な食生活を心がけている自分のような者にとっては「うん、知ってる」みたいな結果でしたが……)。
銀座のサロンで1ヶ月1万2000円のマンツーマン指導
料金が発生するのは、銀座のサロンで個別カウンセリングを申し込んだ場合。今なら「お試し」で、特別価格1,500円らしいです。なんだか、大手エステチェーンの初回チケットと似ていますね。安いチケットで集客して、一定割合を本契約に持ち込むという。管理栄養士によるマンツーマンでのサポートコースは、1ヶ月12,000円です*1。この価格設定は、これまたエステサロンとかなり近いものがあります。今後は「TB◯エステのダイエットコースをやめて、こっちにしてみようかな」という女子も出てくるかもしれません(食事療法中心のクックパッドダイエットは、マッサージなどが中心のエステサロンとはまた別の需要を掘り起こそうとしている感じもしますが)。1ヶ月12,000円というと個人的には「高いな」と感じますが、芸能人が通うような高級ダイエットサロンに比べれば、かなりお得感があります。美容に関心のある若い女性にとっては、決して惜しくない金額でしょう。
リアルの分野に攻め入るクックパッド
クックパッドの収益源は、多い順に(1)月額280円(税抜)の有料会員事業、(2)広告事業ですが、最近はリアルでの事業展開が目立ちます。12年10月にスタートさせた、全国の料理教室を検索&予約できる「クックステップ」(今年5月から「クックパッド料理教室 - クックパッド認定の先生から料理を学ぼう」にリニューアル)。農家から定期的に野菜が届く「やさい便」、ユーザーの住所と近くの提携スーパーを紐づけ「特売情報」を配信するサービスなど。
「クックパッド料理教室」は、料理好きな主婦が手軽に教室を始めるのを応援する色合いも強いようです。サイトには「クックパッド料理教室の先生になりませんか?」とのバナーがあり、
料理教室を仕事にしていきたい、やる気のある方を対象にします。
クックパッド社が生徒さんの集客などの運営支援を行います。 先生はクックパッド料理教室に加盟することで、個人運営では得られない集客とノウハウを受けることができます。
などの文言が。クックパッドブランドで集客し、「料理を仕事に」という女性*2をサポートしますよ、もちろんマージンは取ります、というモデルですね。教室の主催者の手元にはいくら残るんだろう……まあ、もともと「料理ビジネスでガッツリ儲けたい」という人は狙っていないので、そこは大丈夫なのかもしれません。
クックパッドの「有料会員」「広告事業」の利益率はすさまじく、高い収益性につながっています(同社が有料会員を増やす方法は見事で、「クックパッドの無料会員に機能制限!課金ビジネスへの移行とユーザーの反応 」でも触れました)。足元の決算は好調、14年4月期も最高益となったようですね。(クックパッド、営業最高益 :日本経済新聞)
ダイエットビジネスは売上に貢献するのか?
収益性の高いオンラインでの会員ビジネスに比べ、人件費のかかるダイエットサロンや、単価の安い個人の料理教室の運営をサポートしてマージンをとる、といった事業が「売上の第3の柱」になるか?というと、かなり微妙だと思われます。ただ、クックパッドは「料理」という日常に根ざした分野で勝負しているので、リアルとの連動がしやすい。利益面でも、もしかすると、もしかするかもしれないですね。リアルでの展開はブランド力の向上にも繋がります。媒体価値が上がれば、有料会員の増加にもつながるし、広告単価もアップするでしょう。クックパッドおそるべし。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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