クックパッドの無料会員に機能制限！課金ビジネスへの移行とユーザーの反応
日本最大のレシピサイト「クックパッド」が、月額300円のプレミアム会員を本気で増やしにかかっているようです。
若い女性の8割（!?）が使う、レシピ160万件の巨大サイト
クックパッドは20～30代女性の８～９割が利用しているという巨大なレシピ投稿サイトです。
投稿レシピ数は163万件（14年1月現在）。ユーザーは膨大なレシピの中から、いかに「自分にとって最適なレシピを探すか」に日々腐心しています。
たとえば「カレー× 簡単」で検索すると、「つくれぽ」（そのレシピを元に料理を作った人が投稿する写メと短文）が1000件以上寄せられた「殿堂入りレシピ」から、「え、これカレーだよね…？」みたいな代物まで1万3000件以上の「カレーの作り方」がヒットしてしまう。自分好みのレシピを見つけるのはけっこう大変なのです。
ユーザーとしては、できれば誰も作っていないレシピよりも、多くの人が作ったレシピを見たい。みんなが支持したレシピの方が安心（な気がする）からです。
クックパッドでは、10人以上から「つくれぽ」が届いたレシピが「◯月◯日の話題入りレシピ」コーナーに掲載されます。無料会員は直近１日分しか閲覧できませんが、有料会員になれば過去分まで遡って「話題入りレシピ」を検索できる（他に、レシピの「人気順検索」や「カロリー・塩分計算」なども利用できます。詳しくはクックパッドさんのHPをご参照下さい）
だが、いくらメリットがあろうとも１ヶ月300円、年間3600円の出費はちょっと惜しい。いかにして有料会員にならずとも、人気のレシピを探し出すか。
無料会員たちはこれまで、色んな検索方法を試してきました（単にケチなだけ、というツッコミは置いておきます）。たとえば「豚肉 × 生姜焼き× 話題入り」といったキーワードで検索すれば、有料会員にしか閲覧が許されていないはずの、過去に「話題入りしたレシピ」（10人以上が作った人気のレシピ）が出てくるなどの裏ワザがあり、活用しているユーザーはかなりいたようです。
無料ユーザーに「人気レシピ」の検索制限！？
ところが１月初旬から、「クックパッドで『話題入り』と検索しても何も出てこなくなった」との声が相次ぎます。
「検索の所に『話題』と入れても出てこなくなりましたね…COOKPADのレシピの件数増えているの で、その中から自分のニーズに合うのを探すのが困難になりますね。プレミアム会員になれってことなんですかね？」
「私も同じこと思ってました！もう前みたいに『話題』で検索するのは無理なんですかね…」「本当に不便ですよね。もとに戻してほしい」
実際に試してみましたが、確かに「話題入り」「殿堂入り」「つくれぽ1000人」などと検索しても人気レシピは出てこなくなっています。クックパッドは、有料会員しか見られないはずの「話題入りレシピ」を無料会員が探せないようにし、事実上「裏ワザ」を禁じたようです。やはり月額300円の課金へと誘導する意図があるのでしょうか。
この変更は無料ユーザーからあまり評判が良くないようで、アプリのレビューには、
「『話題入り』って検索ワードが使えなくなってほんと不便。利用回数が減った。課金に必死でお粗末すぎる会社。早く前みたく直して！」
「検索しづらくてイライラします。そこまでしてプレミアム会員にさせたいのでしょうか？ 今回の件でクックパッドから離れていく人はたくさんいると思います」
「せっかく無料でいいレシピを検索できるアプリだったのにガッカリ」
（Google Playとapptweakの投稿レビューを抜粋、引用）
といった書き込みがちらほら。
昨年はNAVERの「クックパッドまとめ」に削除要請
そういえば同社は昨年、まとめサイト運営のNAVERに対し「クックパッド殿堂」「クックパッド人気」といった文言の入ったまとめの公開を停止するよう要請していました（「人気レシピ」見るにはお金払って！ NAVERで「クックパッドまとめ」NGに : J-CASTニュース）。
有料会員だけが見られるはずのレシピが、外部のまとめサイトで閲覧できるとなれば「それならプレミアム会員や～めた」という人も出てきてしまうでしょう。クックパッドの危機感は強かったものと思われます。
有料会員は110万人突破、利益は４割増へ
こうした努力の甲斐もあってか、有料会員の伸び数はすさまじいことに。14年4月期の第2四半期時点で110万人突破、純利益は前年同期比４割増と大幅アップしています。
今では無料会員がログインすると「ねぇねぇまだプレミアム会員にならないの？こんなに便利なのに？」とも読めそうなバナーがデカデカと表示され、
バナーをクリックすると「今すぐ初月無料で登録する！」とのページへ。
失礼ながら、検索機能の制限に加え、無料ユーザーには「お金払わずに使っててすみません…」と肩身の狭い思いをさせる作りになったな～と（個人的には）感じます。
ユーザーが投稿したレシピを有料化するなんて許せない！？
そんなクックパッドに対し「ユーザーが投稿したコンテンツを売り物にするのはヒドい！」みたいな意見をたまに見かけます。言いたいことは分かりますが、この時代にそれを言っちゃぁおしまいよ的な感じはします。だって、たとえばニコ動が無料でサービスを提供し続けた結果、サーバー代が負担で倒産したらユーザーはやっぱり困るわけですから…。
クックパッドは上場しているので、「いつまでも無料で使わせて！」という "ユーザーの声"より、「課金で利益を上げて配当を増やしてね」という "株主の利益" をある程度は優先しないといけないでしょうし。
とはいえサイト内検索を無料ユーザーにとって使いづらくして、有料会員へのインセンティブを高めるクックパッドを見ていると、「なんだかなぁ」とも思います。
これまで、多数を占める無料会員が、美味しい料理を考えて「話題入り」レシピを生んだり「つくれぽ」を送ったりして、サイトを盛り上げてきたわけです。今回「裏ワザ」ができなくなったことで、そうした無料ユーザーが「使いづらい」と離れていくのか、それともすんなり有料会員に移行するのか。
無料だったコンテンツを有料にするには、「ユーザーの感情をいかに逆なでしないか」もっといえば「いかに気持ちよく課金させられるか」が重要だと改めて思う次第です。クックパッドの今後に、勝手に注目しております。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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