「#グラドル自画撮り部」が流行った理由
「グラドル自画撮り部」なるものが話題を集めていますね。
男子必見?!倉持由香さんが提唱した #グラドル自画撮り部 というハッシュタグが話題
グラビアの新トレンド!! #グラドル自画撮り部 が熱い! - NAVER まとめ
グラドルたちが次々に、自撮り写メをTwitterにアップ
きっかけは倉持由香さんというグラドルが、Twitterで「 #グラドル自画撮り部」というハッシュタグを付けて自らのオフショットをバンバン公開し始めたこと。ハッシュタグで検索すれば、色んなグラドルの自撮り写メを簡単に見ることができます(画像のリンク先は #グラドル自画撮り部の公式アカウントです)。
投稿には、ファンから「最高です!」「セクシーだね」といったコメントが相次ぎ、写メをお気に入り登録する人が続出。発足人であり「部長」の倉持さんは1日1000人単位でフォロワーが増えているといい、すでにフォロワー5万人に迫る勢いです。写メを投稿することで新たなファンを獲得し、1日で2000人もフォロワーが増えたグラドルもいるらしい。
公式アカウントは数日でフォロワー約9000人(1月25日現在)を集め、#グラドル自画撮り部にアップされた画像を検索できる非公式サイトまで登場しました。
発足人の倉持さんはブログで次のように語っています。
■グラビア界全体を盛り上げて、またグラビアにグラドルがちゃんと載れる時代を復活させたい。皆で一緒に売れなきゃいけない。「自分だけが売れたい」という考えで行動すると、長い目で見た時に自分の首を絞めることになるんです。
■Twitterは上手く使えば、自分を大勢の方に売り込んで新規のファンを獲得することが出来るツールです!「自分がファンだったらどんなツイートを見たいか」を意識することが非常に重要。ネガティブなことばかり、カフェで食べたご飯の写メばかり、告知だけ…。そんなツイートだと、あんまり面白くないですよね?(´°ω°`)
■事務所の方針にもよるだろうけど、グラビアのオフショットとかは積極的に載せた方がいいと思うの!毎日尻画像ばっかり載せている私ですが、最初は「そんなに写メ載せたらDVD売れないよ」って言われました。けど、結果はAmazon1位!
■私のやり方が全員に当てはまるかは分からないけれど、少なくとも私にとっては正しい道だったんだと思います。まず興味を持ってくれる母数が増えないとDVDを買う・買わないの選択もして貰えないですからねっ。この「母数を増やす」ってのが大事です。
(#グラドル自画撮り部 立ち上げ職人|倉持由香オフィシャルブログ「まいにちくらもっち。」Powered by Amebaより)
彼女のこうした発言は「マーケティングアイドルの誕生」などとニュースで取り上げられ、SNSの新たな活用術としても話題を呼んでいるようです(「巨尻」で話題のグラビアアイドル倉持由香さんから、ウェブマーケティングの神髄を学んだ | )。
グラドル自画撮り部がここまで受けた理由
もちろん「グラドルのオフショットが男性の性的好奇心を喚起するから」という単純な理由はあるでしょう。以前から、自身のあられもない写メを定期的にツイートする「自称JK」などは存在していた(つまりそういう女の子たちを見たい、触れ合いたいというアカウントも潜在的に多く存在した)といった事情もあります。Twitterのように匿名性の高いSNSと「性的なコミュニケーション」は相性が良いのですね…こうした理由以外にも、彼女たちの行動がウケた背景を考えてみました。
(1)ネーミングセンスの妙
「◯◯部」というのは言うまでもなく学校における部活動をにヒントを得た表現であり、ユニセックスな学校文化を感じさせます。これをセクシャルな「グラドル」の「自画撮り」という表現と組み合わせると何だかミスマッチで、ちょっと隠微な響きもある。「え、なになに?」と興味をそそります。
加えて、部活動にまつわる「青春期に一生懸命がんばってる若い子たちの集団」というイメージを換気させることもできる。グラドル自画撮り部の書記を担当する塚本舞さんは、次のように語っていました。
「今、グラビアアイドルさんが、有名なグラビア誌の表紙をなかなか飾れなくなっているんですね。今はグループアイドルさんが沢山いて…ちょっと前だったらグラドルが流行ってた時代があると思うんですけど、なかなか(表紙を)取れる機会が少なくなってしまっている」
「グラビアアイドルさんたちが誌面という分かりやすいメディアに出れなくなってしまった。だったら私たちはTwitterで自分の写真を撮って、それをアップしようと」
「発足したら、1日で部員が100人くらいになったんです。グラドルの子がみんなハッシュタグを付けて(自撮り写メを)アップするようになったんですね。有名な女の子も入ってくれた」
「今はグラビアアイドルに興味をもつ人の母数が減っているので(こうした自画撮り部の活動で)グラドル好きの母数を増やして、業界全体を盛り上げて、底上げにつなげるのが目的です」
「水着の写真を無料で提供するのは(グラドルとして)ホントはダメなんですよね。でもまずは知ってもらうことが大切なので。『無料で見られるのはここまで、動いてる姿を見たい人はDVD買ったり、実際に会いに来て下さいね』っていうような、『入り口』になればいいなと思ってます」
(よしログ 今Twitterで「グラドル自画撮り部」がアツい!!|無料動画 GyaO!|よしログ|お笑いより塚本舞さんの発言を引用)
彼女が語ったように、ここ3年ほどはAKB系列のグループがグラビア雑誌のページを占拠し、グラドルたちが活躍できる場所は減少しています。昨今ではグラビアアイドル並みのビジュアルやタレント性を売りにする "セクシー女優" もメディアに多く登場するようになってきた(もう解散してしまいましたが、人気セクシー女優を集めたアイドルグループ恵比寿マスカッツなどはその典型ですよね)。
AKBグループとセクシー女優に押され、グラドルたちは苦境に立たされている。こうした背景を知る人たちからは特に「おぉ、グラドルたちが何か頑張っている!応援したい!」といった評価も得ているようです(先ほども紹介した「グラビアアイドル倉持由香さんから、ウェブマーケティングの神髄を学んだ」など)
(2)部活動という"自虐性"がウケた
「自画撮り部」という響きには自虐性があります。「私、こんなエロい写メ晒してますけど、これはただの部活動なのですっ!なので…興味があればご覧下さいね…^^;」という自虐性。これにより、グラドル自身の「ねぇねぇ私の身体、キレイでしょ、可愛いでしょ」というナルシシズムを隠すことができるのです。
自身の顔なり身体なりをSNSに晒す行為は、普通なら自己愛を感じさせるものです。そこにエロティックな要素があればなおさらでしょう。下手すれば「このビッチめ!」という批判も(仕事でやっているグラドルに対してでさえ)ありえる。
倉持さんは「コレはあくまで部活です」という低姿勢なスタンスをとっている上、性的な写メをアップするさいに「巨尻職人の朝は早い」など適度なユーモアを加えています。そうすることで、「どーせビッチのナルシシズムだろ」的な横やりを避けることができているように思います。
エロティックな写メをアップする行為を「部活動として他のグラドルも巻き込んで一緒にやる」ことで、その行為にまつわるビッチ性をある種の「爽やかさ」へと昇華させることが可能になる。すごいよ「グラドル自画撮り部」。
その美しい身体に嫉妬するから見ないようにしつつもやっぱり気になって見てしまう私は、彼女たちのマーケティング戦略に負けたのでしょう。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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