目ヂカラにこだわる女と、肌ツヤ重視の男たち…美意識のギャップはなぜ生まれる?

20~35歳の働く未婚女性300名に対し、「女子力を格上げするためにメイクにおいて一番こだわりたいポイント」を聞いたところ、

■ 最も多かった回答は「アイメイク」で46%。続く「ベースメイク」(19%)、「リップメイク」(11%)を大きく上回った

■ 一方の男性たちに、「女性の顔において、魅力に大きく関わると思うポイント」を聞いたところ、最も多かった回答は「肌」(63%)で、2位の「目」(54%)を上回る結果に

■ 女性たちがアイメイクに一番こだわりたいと考えている一方で、男性たちは「目」以上に「肌」を重視しているという、男女間のギャップが明らかになった

 (引用元:株式会社イプサによる調査

http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000009058.html

 とのこと。女性がアイメイクにこだわる一方、男性は肌のきれいさを重視している…モテたいなら「つけまつける」手を止めて、肌のお手入れ頑張りましょう☆というような、とりあえず納得のいく調査結果です*1

現代女性のアイメイク重視は、浜崎あゆみの影響が大きい

現代の女性たちがアイメイクを頑張るようになった背景として、浜崎あゆみの影響は見逃せません。「目力」という言葉も今ではすっかり定着しましたが、これは2000年にコーセーが若者向けの化粧品ブランド「ヴィセ」のCMに浜崎あゆみを起用した頃から一般化したもの(VOCE美ィキペディア | 目力編|i-VoCEより)。

コーセーがあゆを広告モデルに起用した期間は00~04年と長期にわたり、あゆ効果でマスカラなど「目力」をアップさせる化粧品がバカ売れしました。そのころ中2だった私も、浜崎あゆみのあまりの可愛さに、化粧品コーナーの前でしばし立ち尽くしたのを覚えています。こんなCMもありました。

 
Kose Visee I Am... - YouTube

あゆの登場によって、女性はより大きく華やかな目に憧れるようになりました。一方、マスカラをつけ過ぎて「ひじき」のようになったまつげや、ラメ入りシャドウでギラギラになった目元などなど、肥大化する女子の「目力」に男性陣は若干、引き気味のような気もします。先のアンケートでも、男性は女性の目よりも「肌」を重視しているとの結果でした。

なぜ男性は、女性よりも「肌」を重視するのか?

男性は女性よりも、「肌」を重視する傾向にあるといいます。そして女性は、男性よりも「目」を重視しています。こうした違いはなぜ生じるのか。そのヒントは、化粧品広告の歴史にあるように思います

明治時代、日本の化粧品メーカーによる広告は、イラストによって「全体的な顔の造作」、とりわけ「肌」の美しさをイメージさせるものが多かったそうです(『美容整形と化粧の社会学』より)。明治~戦中にかけては、「美=肌の美しさ」だったのです。こういう感じです(1937年、ウテナ化粧品本舗)。

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http://blogs.yahoo.co.jp/thatseurobeat/folder/1232991.html?m=lc&p=9より画像転載)

 ところが戦後、イラストから写真へと広告の手法が移り変わるにつれ、「顔全体」ではなく、目や唇、頬、眉のアップなど、「顔のパーツだけを載せた広告」が増えてきます。具体的には、こんな感じ(1961年、資生堂)。

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http://matome.naver.jp/odai/2135011186773926801/2136582048226026703より画像転載)

このように、断片化された顔のパーツを「美」の象徴として描く広告コピーは、60年代になって一気に増加したといいます。明治~大正にかけては全く見られず、戦中でもせいぜい1割にすぎなかった「パーツ重視」のキャッチコピーが、60年代以降、化粧品広告全体の約半数を占めるまでに増加したのです(前掲書より)。

68年には、このような「どアップ」広告も登場しました(1968年、資生堂)。

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 (http://matome.naver.jp/odai/2135011186773926801/2136582048226026703より画像転載) 

90年代に入ると、安室奈美恵を起用したこんなデザインが登場(1998年、コーセー)。

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 (http://valens11.blog68.fc2.com/category17-1.htmlより画像転載)

最近では、コーセーのメイクアップブランド『ファシオ』のリニューアルに伴い、桐谷美玲のこんな広告も(2014年、コーセー)。

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http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000009058.htmlより画像転載)

 

女性の美は「パーツ重視」へ

まとめると、明治~戦中までは「顔全体や肌の美しさ」が強調されていたのが、高度成長期からは「目、唇などのパーツ」重視へ。こうした広告表現の変化は、女性たちの美意識に多少なりとも影響を与えたことでしょう。

目だけの写真が「美しい」ものとして可視化され、「目もと美人」「口もと美人」といった言葉も登場する。女性たちは特に70年代以降、顔のパーツに美を求めるようになっていったのです。

一方の男性たちは、こうした価値観の変化を女性ほどは体感していないのではないか。こんなふうにおっしゃる方もいます。

「女性は相手の人の先端を見るんです。爪、靴、髪の毛。でも男は女性をみるときは全体感で見るからまったく気にしない。どんな服を着ていたとか、髪を切ったかどうかすら覚えていない。…男ってそういう生き物なんです」

(『普通のダンナがなぜ見つからない?』の西口敦さんに聞く(前編)より抜粋、引用。詳細はリンク元をご参照下さい)

こうした男女の意識ギャップというのは、「全体的な肌の美しさ」はもとより「パーツの美」をより具体的に強調してきた戦後の化粧品広告から生じた部分もあるのではないか、と思うわけです。

美にまつわる男女の意識ギャップを「生物学的な性差(男はそういう生き物で云々)」に求める議論もまぁ面白いのですが、こういう考え方もできますよ、というお話でした。

 

 

【北条かやプロフィール】

86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。

Twitter  @kaya8823

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*1:サンプル数が少ないじゃないかとか、そういうツッコミは置いておきます。