「ぽっちゃりブーム」でもオンナは痩せ続ける

どうも世の中、「ぽっちゃり」ブームのようです。 

発端は2010年。『an-an』の「いまポッチャリさんが大人気」特集です。当時はまだ「小特集」止まりでした。

 ところが今年の7月、『Cancam』の表紙にデカデカと『この夏、ぷに子がかわいい理由』の文字が踊ります。

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これは革新的な変化です。なぜなら同誌では数年前まで、エビちゃん押切もえなど、「痩せすぎ」のモデルが人気を集めていたからです。

Cancam』は今年の5月号で、ふっくらした女子を「ぷに子」と命名。「ぷに子の大逆襲、始まる!」特集を組んだのですが、これが読者に大好評だったそうです*1

 同誌が男性にアンケートをとったところ、身長155cmで46kgは「痩せすぎ」、52~64kgが「ぷに子」、68kg以上は「太っている」との判定が下されました。

 えぇっ!?と思いました。私は身長157センチですが、男子基準で「痩せすぎ」の46キロのときでさえ「もっと痩せたい」と思っていましたよ。そんなにぽっちゃりさんは魅力的なのか…ま、男性が「ふくよかな女性に性的魅力を感じる」なんてのは土偶の時代から言われていることですけれどね。

 とはいえ「ぽっちゃり」は女子界においても、ひとつのマーケットを形成しているようです。

今年3月には日本初の“ぽっちゃりさん”専門ファッション誌『la farfa(ラ・ファーファ)』がぶんか社から創刊されました。発売前に重版がかかるほどの売れ行きだったそうです。同誌はこの秋から隔月化されています。

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 ニッセンの「スマイルランド」や「アズノゥアズ オオラカ」など、LLサイズ以上の女性をターゲットにしたブランドも、人気を集めています。

 そういえば、90年代には華原朋美安室奈美恵など、細い体型の歌手が多かったように思いますが、ここ数年はAKBのように「普通っぽい」体型のアイドルが人気ですね。

 こうした「ぽっちゃりブーム」は世界的なものです。

 

ELLE』も『VOGUE』も ガリガリじゃない現実的なぽっちゃりモデルがファッション誌の表紙を飾っている件

 

 世界の「ぽっちゃりブーム」のきっかけは2006年。スペインのファッションショーで史上初の「痩せすぎモデル締め出し」が行われ、話題を集めました。ガリガリ体型のモデルが「美の規範」となり、若い女性に摂食障害が広まっている、との危機感からです。

 実際、日本でも女子の「痩せすぎ」が問題となっています。下のグラフにあるように、今の20代女子は戦後直後よりも痩せているのです*2

 

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農林水産省によると20代女性の2割強は「痩せ気味」にもかかわらず、44%が「自分は太っている」と考え、55%が体重を減らそうとしています摂食障害の若い女性は100人に1人とも、50人に1人とも言われています。

 私は、いくらぽっちゃりブームといえども、女子の痩せ願望が止むことはないと思っています。理由は下記の2つです。

 理由1)

ものすご~く大きな歴史でみれば、現代は「痩せていることに価値が置かれる社会」だから。

 多くの人々が貧しかった中世から近代初期にかけては、太っていることはむしろ「豊かさの象徴」でした。ところが社会が豊かになり、人々が太り始めると、痩せていることが逆に豊かさのしるしや「一部の人々の特権」になります*3

 私たちはダイエットによって「身体コントロールの快楽」を知ります。高度消費社会では、 私たちはその快楽から逃れることはできないのです。その一部がダイエット依存という病理になった例が、拒食症や過食症です。

理由2)

高度消費社会で肥大化した「美容関連産業」は、痩せようとする人がいないと儲からないからです。特に若い女性は容姿への関心が高い分、ダイエット産業にとっては良いお客さんです。

初のぽっちゃりさん専門誌『la farfa』はよく売れているそうですが、実は、広告がほとんど入っていません。女性誌の半数近いページを占める、ダイエット、化粧品、エステ、美容整形の広告主が出稿していないからです*4。女の子たちがダイエットに何度もチャレンジしてもらわないと、儲からない産業があるのです。

 ぽっちゃりさんへの熱い視線も、ダイエットブームへの一時的な反動にすぎないでしょう。だって誌面に登場するぽっちゃりさんたちのほとんどが「着痩せ」を目指しているのですから。結局、「痩せ=美の規範」となっていることに変わりはないのですね。

 これらの理由から、私は「多くの女性の痩せ願望が止むことはない」と考えているのです。

 

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*1:Cancamオフィシャルホームページより

*2:社会実情データ図録より

*3:アメリカを見ても、太っているのは圧倒的に階層が下の人たちです。上流階級はエクササイズに菜食主義に…と健康管理に余念がありません。

*4:これについては以前、エコノミックニュースに記事を書いたことがあります。詳しくはそちらをご参照ください。