保険大好き日本人が、みんなで支える生保レディ

ご無沙汰しております、ノマド系OL、かやです。ちょっと仕事がバタバタしており、久々の更新になってしまいました。

 

 

さて少し前ですが、4/21の週刊ダイヤモンドが『騙されない保険』特集を組んでいます

 

 

内容をざっとひとことでまとめると、「保険各社は、消費者の不安を煽って複雑な商品を売りつけることもある。注意して選べ」。保険会社の口車に乗せられホイホイ加入すると損するぞ、といった感じです。



ライフネット生命岩瀬大輔氏によると、日本人は生命保険が大好き。全世帯における生保加入率は90%で、9割の世帯が何らかの生命保険に入っていることになります。この率はアメリカの2.2倍、イギリスの2.5倍、フランスの2.25倍です*1



また、日本人の人口1人あたりの「生命保険保障額」はアメリカの約3倍、イギリスの約6倍。平均すると、20年間で1世帯あたり1,000万円近い生命保険料を払っている計算になるそうです。すごい金額ですね。

 

 

日本人の生保加入率が一気に高まったのは70年代から。経済成長とともに都市部で核家族の割合が増え、「一家の大黒柱」を期待される男性が次々と加入していったのが表向きの理由とされています。



父親1人で一家を食べさせていくわけですから、その父親が死んでしまったら大変です。サラリーマンの夫に主婦の妻という核家族にとって、大黒柱である父親の死は最も大きなリスク。だから「夫の死亡保障」となる生命保険が売れたわけです。主婦はこぞって、夫に高い生命保険をかけました。「ご主人が亡くなったときのために備えましょう」。生保レディのこのセールストークが、分厚い専業主婦層の心に響いたんですね。



ただ、都市化が進んで専業主婦率が高まれば生命保険が売れるかといえばそうではない。欧米と比べ、やっぱり日本人は生命保険に入りすぎなのです。



……ここには日本の生命保険会社特有の事情があります。



日本でも、70年代にまでは満期保険額と死亡保障額が同じになる、「養老保険」が中心でした。30歳で、60歳で満期になる500万の保険を買ったとしても、殆どの人は健康のまま60歳を迎え、満額の500万円を受け取ります。つまり保険というより「貯蓄」に近い



ところが70年代以降、この「貯蓄」の部分を薄くし、加入者が亡くなった場合の「死亡保障金」が満期保険額の数十倍、という「保障型」の商品が増え始めます。70年代に始まる、「死亡保障の大型化」ですね。

 

 

払った保険料が満期を迎えればそのまま戻ってくる「貯蓄タイプ」に比べ、基本的には掛け捨ての「保障タイプ」は、保険会社が儲かる。貯蓄タイプと保障タイプでは、利益率が数倍違うのです。消費者からすれば貯蓄タイプで十分なわけですが、70年代以降、生保各社は収益性の高い保障タイプの商品をどんどん増やしていったのです。



80年代になり、働く女性が増えるなどの理由から「死亡保障」のニーズが少なくなっても、保険各社は従来の売り方を変えませんでした。それどころか知識の少ない消費者に対し、保険の切り替えのさい、貯蓄型から保障型へと転換させるという「転換セールス」まで行い、自社の利益を守り続けたのです…。



なぜそこまでして、保障タイプの保険を売りまくる必要があったのか?

 

それは、日本の生保会社の営業システムが原因です。

 

みなさんは、「生保レディ」と呼ばれる女性の営業さんから「保険はぜひウチで」とお願いされることがありませんか?私も母の友人から、ときどき生保加入を勧められます。



1社専属の生保レディが直接、お客さんの元へ行って保険を売る。このスタイルは海外にはみられない、日本独自の仕組みらしいのですね。



この生保レディによる販売にかかるコストをまかなうため、日本の保険会社は収益性の保障型の商品を作り続ける必要があったのです。日本の生命保険は生保レディの人件費が上乗せされ、どんどん高額に、そして複雑になってきたのです。どデカい販売網を維持するためには、収益性の高い商品を作り続けなくてはならなかったんですね…



主婦が多数派だった高度成長期、彼女たちの中には、離婚や夫の死亡などでやむを得ず働かねばならなくなったケースも多かったようです。生保レディの離職率は50%。彼女たちには高いノルマが課せられます。そのぶん、歩合給でインセンティブもつく。そのインセンティブは、彼女たちが売る高い生命保険料に含まれているのです。



つまり、主婦にとって最大のリスクは夫の死なわけですが、そのリスクを減らす(と信じられていた)生命保険を、夫と離別した女性たち、または夫の収入が不十分だから働かねばならない女性たちが、主婦たちに向けて売ってきたのです



多くの女性が働かずにすんでいた時代、主婦になれなかった女性たちにとって生保レディは職の受け皿となっていたんですね~

 

 

そしてその生保レディを食わせるため、保険会社は収益性の高い複雑な商品を作り続けてきました。とはいえ生保レディたちは、高いノルマが達成できず、1年で半数が辞めていきます。離職率、実に50%。どこのブラック企業か…って感じですよね。そんな生保レディにかかる経費を回収するため、さらに利益率の高い商品をつくる生保会社…日本の生命保険会社は、戦後の「男性主稼ぎモデル」のリスク=夫の死を媒介として、ぶくぶく成長してきたといえるでしょう



まあ特に養う家族もいない私としては、重~い生命保険など背負うことなく、気軽に生きていきたいですけれどね。高い生命保険料を払えるサラリーマン家庭は、ある意味、いまだに「男性主稼ぎモデル」を信じていられる幸福な層かもしれません。だまされるな生命保険とはよくいったものですw それでは今回はこのへんで^^



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取材協力:生命保険 評論家 長嶺恒雄氏 Twitterアカウント @TsuneoF