「若者の献血離れ」こうすれば食い止められる?

先日、次のような記事を書きました。

「はたちの献血」キャンペーンが必要なほど「若者の献血離れ」が進んだ理由(エコノミックニュース)

今年も2月末まで、日本赤十字社厚労省は「はたちの献血」キャンペーンを展開しています。イメージキャラクターは女優の武井咲(20)、イメージソング「Love」を歌うのは、若者に人気があり4年連続で紅白歌合戦にも出場したAAA(トリプルエー)です。

はたちの献血キャンペーンは有効か?

このキャンペーンは、テレビCMにラジオCM(どれくらいの若者がテレビやラジオから真剣に情報を得ているのかは分かりませんが)オリジナルグッズの配布(いる?)など、若者の献血離れを食い止めようとする日赤+厚労省の血の滲むような、力の入ったものです。

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【日本赤十字社】平成26年 はたちの献血- LOVE in Actionより)

効果のほどはともかく、特設HPは手の込んだ作りで情報量も多く、一見の価値ありです。

10~20代の献血離れは深刻、このままでは血液不足に

こうした啓発活動をせねばならないほど若者の献血離れは深刻です20年前と比べて10代の献血者数は3分の1まで減り、20代では半減しているのです

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 (献血者数の推移|厚生労働省より転載、黒い◯を追加)

この間、30代はほとんど変わらず、40~50代の献血者数はむしろ増えているので、いかに多くの若者が献血への関心を失っているかが分かります

このままでは需給バランスが大きく崩れ、2027年には100万人分以上の血液が不足する恐れがあるといいます医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)より)。

どうして若者は献血しなくなったのでしょうか。「少子化」以外の要因を考えてみました。

高校時代から、献血に関わることがなかった

日本赤十字社が、今年新たに成人を迎えるハタチの若者200人を対象にアンケートを実施したところ、彼らが「今まで献血しなかった理由」の1位は「きっかけがなかったから」。そんな彼らも9割は「献血は世の中にとって重要」と考えています献血は何となく良いことだと思ってはいるけれど、行動へと至るトリガーがないという感じでしょうか。

そもそも「献血というイベントに触れたことがない」若者は増えています。日本赤十字社によると、最近では献血に対して協力的でない高校が増えているとか。'02年に週休2日制が実現したことで、平日の授業カリキュラムが過密化し、高校側が献血に時間を割けなくなっているのです。

また近年、保護者や養護教諭らの間で献血の副作用」(気分が悪くなったり吐き気をもよおしたり)の知識が広まり、成長期の子供たちに献血をさせることにNOを唱える学校も増えている(事前に問診もあるので、副作用が出る確率はかなり低いのですが)。学校側は「何かあったら責任を取れない」と、消極的になっているのです

そういえば30代の知人は「高校時代、学校に献血バスがよく来てたよ」と言っていましたが、私は学生時代、校内で献血バスというものを見たことはありません*1。授業でも献血について学んだことはないような気がします。

とにかく献血は高校時代から、自分にとって身近なものではなかった。だからハタチになっても献血しない。こういう若者は多いのではないでしょうか。

 不健康な若者たち

私はこれまでに何度か献血をしようと試みたことがありますが、下記のようなチェック項目を全てクリアしても、その後、医師の問診があり「健康上の理由」で断られることが多いです(疲れ気味?なら今回はやめときなさい、というようなことも)。副作用防止のため、医師も慎重になっているのかもしれません。

<以下に該当する方は献血をご遠慮ください>

■渡航歴について

(a)海外から帰国(入国)して4週間以内の方 (b)昭和55年(1980年)以降,ヨーロッパ・サウジアラビアに一定期間滞在された方。

■この3日間に出血を伴う歯科治療(抜歯・歯石除去等)を受けられた方

■輸血や臓器の移植を受けたことがある方
■ヒト由来ブラセンタ注射薬を使用したことがある方
エイズ検査が目的の方
■この6ヵ月以内に下記に該当することがある方

(a)不特定の異性または新たな異性との性的接触があった 

(b)男性どうしの性的接触があった

(c)麻薬,覚せい剤を使用した 

(d)上記(a)〜(c)に該当する人と性的接触をもった

■梅毒・C型肝炎マラリアシャーガス病にかかったことがある方

※上記に該当されない方でも、検診医の判断で献血をご還慮していただくことがあります。

※医集品を服用されている方は、必ず検診医にお申し出ください

日本赤十字社 東京都赤十字血液センターHPより)

 最近は痩せ型の女性が増えており、献血に必要な体重(200mlなら40kg、日赤が推奨する400ml献血なら男女とも50kg以上)に足らないケースが増えています(かくいう私も無理です…)。

低体重の女性はそもそも献血できませんし、貧血気味であったり色々と不健康(その場の医師の判断で決まる)な要素が盛りだくさんだったりするので、献血を断られてしまうケースが多いんですね。ある男性の知人は「献血したいけど、ガリガリだし、向精神薬を飲んでるから無理な気がする」と言っていました。こういうタイプの若者は、献血ルームを訪れるハードルも上がります。

東日本大震災の後、若者は献血するようになったが、長続きせず

震災後は、"一時的に" 若者の献血者が増えたといいます。(若者の献血 震災後目立つ - 47NEWS

が、残念ながら「献血での社会貢献」は一時の盛り上がりで終わったようです。震災の記憶を風化させぬよう、今も官から民まで様々な人たちが奔走する中(そういえばAKBメンバーも定期的に被災地の学校を訪れていますね)、若者による献血での社会貢献は長続きしなかった。

日赤によると、献血で集められた血液製剤の多くは、高齢者が多数を占めるガンの治療に使用されています血液製剤を使用する人の約85%は50歳以上の患者さんです)。「どうして高齢者のために若者が血を抜かれなきゃいけないんだ!ただでさえ血税取られて苦しんでるのに」みたいな感情的な反発も、ネットでは割と見かけます(もちろん、そんな意見をもつ若者は少数だと思いますが)。

それはともかく、厚労省や日赤から「最近の若者は個人意識の高まりで公共への貢献意欲に乏しく…」などとお説教をされて「よし、献血しよう!」という気になる若者はそれほど多くないでしょう

ましてや「オリジナルグッズがもらえるから」とか献血ルームは意外と快適でスタッフさんは優しく、クッキーなんかも置いてある」からといって、若者が献血したくなるわけでもありますまい。

若者の「社会貢献」ムード、高めるために必要なもの

ハタチの皆さんが献血しない理由の2位は「注射が苦手だから」次いで「特に興味が無いから」「怖いから」の順となっています*2献血への無関心と苦手意識、さらには恐怖…これを乗り越えてもらうには、相当の仕掛けがないと厳しいのではないでしょうか。

いくばくか不謹慎な言い方ではありますが、「献血離れ」している10~20代も、何らかの「物語」(例えば "被災地への貢献" というストーリー)があれば、献血ルームに足を運んでくれるのだと思います

献血というイベントに参加するには、それなりのドライブ感というか、お祭り感、「自分は社会に参加している!」ということへの喜びが必要なのではないか

AKB商法的なものに学べ!というわけではありませんが、ベタな物語への没入感というか、何らかの「見返り(それはモノとは限りません)」があれば、今の若者たちはきっと献血くらいなんてことはないのだろうと思います。

【北条かやプロフィール】

86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。19歳の時、大澤真幸『身体の比較社会学Ⅰ・Ⅱ』を読み衝撃を受け、以後社会学に没頭。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。

星海社新書「キャバ嬢の社会学」より引用

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*1:もちろん、地域による違いは大きいのかもしれませんが……。

*2:http://ken-love.jp/hatachi/kisya.htmlより。