「一流企業の受付嬢」への酷いコメントに、ちょっと共感した
先日ちょっと話題になっていた、「一流企業の受付嬢の実態 」を興味深く読みました。軽いネタ記事なのですが、「受付嬢」たちがどんなことを言っているかというと…
「タレント控室の受付の日は、芸能人からのアプローチもある。お笑い芸人さんが多いんですけど。とりあえず『うわー、かわいいね』と連呼してきます」(某キー局の受付嬢(25))
「数珠つなぎで飲み会が絶えることがない。だから人脈はすごく広がる。そこから年収も高くてネームバリューもあって、っていう男を狙ってるコもいる」(財閥系商社の受付嬢(27) )
「職場での彼氏がいるコの率は「高いよ。彼氏いないコはいない。遊び人が多いかも。ちゃんとつき合ってる人がいて、でも合コンも行くし、飲み会もするという感じ」 (有名レコード会社の受付嬢(24))
受付の求人サイトの担当者:「受付は会社の顔でもあり、お客様に対応する場所なので、きれいなだけでは勤まりません。新卒で別の会社に就職し、きちんと教育を受けて常識を身につけている人が好まれます」。
やはり“選ばれしもの”だけが、会社の顔になれるということのようだ。
これに対するコメントがかなり酷いです。抜粋し、まとめるとこんな感じです。
■ なんか嬉々として性欲処理の道具(しかも無料)になり下がっている勘違いちゃんみたい
■ 生まれついて持ってる財産。 使えるモン使うのはべつにぜんぜん悪くないと思うよ
■ 受付嬢ってただの派遣じゃん(笑) “高嶺の花”って(笑)
■ 風俗嬢のレベルだ
などなどミソジニーたっぷりですが、個人的にはコメント主の気持ちが分からないでもありません。私は以前から「受付嬢」という人種にとても興味があり、某大手企業に勤めていた知人に(根掘り葉掘り)その実態を聞いたことがあります。
受付嬢の中には確かに、上の記事と同じような子もいるようです。接待要員として人気を集め、お偉いさんたちとのデートを重ねたり、彼氏がいるのに自分の勤務先で「格上」の男性を狙ったり、キャリアアップに勤務先の男性を利用したり…受付嬢同士の人間関係はドロドロして大変なので、その中で生き残っていく受付嬢は特に強いというか、上昇志向のある子は特にすさまじいです。とにかく女を武器にしているにもかかわらず、それを感じさせない。具体的には「私、あくまでイチ会社員なので…」と控え目な面をみせる。それが男性社員には好印象だそうです。
リッチな男性との交際を狙う彼女たちは美容にかけるエネルギーも大きく、女として自分よりも数段上だと感じます。会社員時代、いわゆる「一流企業」を訪問することも多かったのですが、確かに受付嬢には美人が多いような気がしました。彼女たちを見ていると、おんぼろスーツに疲れ顔の自分が寂しくなり「同じ女でこうも違うのか…」と何とも言えない気持ちになったのを覚えています。
彼女たちは事務職なのに「会社の顔」として、採用の際にはカオが非常に重視される*1。要は「見られる性」であることが前提となっているわけですが、それをみずから引き受けているのです。
事務職でありながら性的対象にされるというダブル・スタンダードは、時に嫌なものです(仕事の飲み会で、自分が「女であるから」という理由だけでお酌を命じられることを想像すると、やはり嫌な気がします)。が、そのダブルスタンダードをむしろ自分にとって都合のいいものとして受け入れ、活用するのが受付嬢たちです(もちろん受付嬢だけではありませんが)。
「ブスのヒガミ」と思われてしまうかもしれません。でも、「受付嬢」という存在を積極的に作り出すこの社会のジェンダー構造、そこへ嬉々として入っていく当の受付嬢という存在、そのめくるめく女の悦びみたいなものに、同じ女性として頭がくらくらするのです。そんな彼女たちを、女である私が「どうせビッチでしょ」と非難することは、ミソジニー(女性嫌悪)を自らにも差し向けることになります。受付嬢という存在は「私の中の女性嫌悪」を刺激してやみません。彼女たちを見てモヤモヤする自分のような女もいるということを、単なる「ブスのヒガミ」で片付けてほしくないと思うゆえんです。
【北条かやプロフィール】
86年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員を経て、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』刊行。
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