ちきりんさん、『未来の働き方』は、女子にとって「いいこと」ですか?
ちきりん氏の『未来の働き方を考えよう』を読みました。
この本に書いてあることを5つにまとめると、こんな感じです。
1)IT革命やグローバル化の進展により、もはや「一流大学を出て大企業に入り、定年まで"勤めあげる"」働き方は時代遅れに。
2)若者の中には組織に縛られず、自由を重視する人も出てきた。日本はお金がなくても生きていける国。それほど働かない代わりに、不動産や車を買わず、子どもをもたないなど、ミニマムに生きる人がいてもいい。
3)人生の後半で「働き方」を選びなおそう。経験を積んだ40代の方が就活はうまくいく。20代よりも「やりたいこと」だってハッキリしている。半年働いて半年遊ぶ、という生き方もいい。
4)キャリアを選びなおすのに、元々の能力やお金は関係ない。「そんなことで食べていけるか?」より、「その生活を自分は本当に楽しいと思えるか?」のほうが重要だ。
5)自由になりたいなら、「組織に縛られなくても稼げる人」になろう。そして人生を主体的に選ぼう。
……26歳、メガネライターとして歩み始めたばかりの自分は、これらのメッセージを肯定的に受け止めました。
「好きなことを仕事にして、組織に縛られず、働き方を主体的に選ぶために」「市場の原理を学んで稼げる人になろう!」。彼女の主張に、ほぼ異論はありません。
ちきりん氏は、ネオリベ・カツマー的に「市場で稼ぐ力をつけよう!」と言うだけでなく、「お金がなくても、好きなことやれればいいじゃん、そのほうが楽しいよ!」と言ってくれます*1。「こんな格差社会でも、好きなことさえあれば何とか生きていけるかも…」という、淡い期待も抱かせます。
少し話はそれますが、20年ほど前に始まった「ネオリベ改革」の結果、ワリを食ったのは「多くの女性(と若者)」でした*2。
今や女性の6割近くが非正規雇用*3。ネオリベ改革は、「一部の正社員の女」と「大多数の非正規の女」との間に、"女女格差"を広げたのです*4。もちろん、男性の間でも格差は広がっています。
(日経新聞2013年7月13日報道より)
どんな生き方を選んでも、結果は自己責任。私は「自己責任」でフリーの道を選んだので、これからの人生は相当険しくなることが予想されます。
なので、ちきりん氏のメッセージ:「ある程度稼いで、好きなことやってる方が人生楽しいよ!」には勇気づけられました。格差社会をゆる~く生き抜くためには、終身雇用、子ども、持ち家、車といった「人並み」を手に入れる努力より、大切なことがあるのかもしれません。
そんな生き方にあこがれる一方、 彼女が例に出す「新しい若者たち」は、90年代のリクルートによる「フリーター礼賛」と、ちょっと似ている気がします。
シェアハウスに住み、本はブックオフや図書館で手に入れ、服や靴をほとんど買わずに、移動は自転車。旅行には夜間長距離バスやLCCのキャンペーン価格を使い、ネットで知り合った友人の家に宿泊。夏には市民プールで泳ぎ…(pp.114-8一部抜粋)
このようなミニマムな生き方であれば、
正社員である必要もフルタイムである必要もありません。数年働いて数年遊ぶといった生活も可能になり…(p.114)
ちなみに、p.118に「最悪の場合は生活保護もある」という記述を見つけたときは、一瞬ドキッとしました。こういう若者たちは、一歩間違えればマックで寝泊まりする「ホームレスギャル」になるのでは…。
というわけで、ちきりんさんの『未来の働き方』には鼓舞される一方、一抹の不安も覚えるのでした。自分のような小心者には、「人並みの生活を得ないと貧困層になってしまう」という恐怖があるからです。
ちきりんさん、私のような小心者でも、「好きなこと」を見つけて、楽しく生きていけますか…?
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*1:もちろん、ある程度は「稼ぐ力」がないとお話にならない、というのは前提だと思いますが。
*2:1985年に「男女雇用機会均等法」が成立し、女性も"男性並みに"働くチャンスが与えられました。一方で同年、「労働者派遣法」も成立。それ以来、非正規雇用として働く女性の数は、どんどん増えています。
*3:背景には「第3号被保険者制度」などの専業主婦優遇策や、多くの職場環境が女性にとって厳しいものであり続けていることも関係しているでしょう。
*4:1人暮らしの女性の3人に1人は貧困層です。では結婚すれば安泰かというと、そうではありません、1人暮らしの高齢女性(つまり夫に先立たれたおばあさん)のうち、過半数が貧困層だからです。